Reported by
株式会社カケハシ スカイソリューションズ
企画開発室
中野 祐介 さん
活用の場が広がる「リアル脱出ゲーム」
いい大人が全力疾走したり、大きな声で悔しがったり、仲間と手を取り合って興奮して歓喜する、世にも奇妙な光景を見ることができる場所がある。
「リアル脱出ゲーム」の会場だ。
リアル脱出ゲームとは、「SCRAP社」が運営する謎解きエンターテインメントイベント。イベント参加者は、とある場所に閉じ込められる。あたりを見渡すと様々な暗号や謎が張り巡らされており、プレイヤーたちは仲間と協力し、すべての謎を解き明かし、脱出を試みる。
いまや謎解きは、ただの「子供の遊び」ではなく、年齢問わず、場所も国も問わない遊びになりつつあるほど人気だ。
謎解きは、ゲームイベントとしてのみならず、様々なシーンで活用されている。例えば、お見合いパーティとして開催されたり、結婚式の余興イベントとして開催されたり、企業の採用活動や研修にも使われたり。また、VRやARなどの技術発展により、謎解きゲームで表現できる幅は大きく広がっている。
「リアル脱出ゲーム」を用いて献血を促進
一見概念的に遠い「SDGs」にもつながる謎解きゲームを私は見たことがある。目標3の「すべての人に健康と福祉を」につながる「献血謎」という謎解きだ。
仕組みはかなりシンプルで、献血をすれば、献血ルームで謎解きキットがもらえるといったものだ。「謎を解きたい」という欲求を叶えることと引き換えに、献血を促進させる仕組みである。
「善行をしたいけど、なかなかきっかけがない。」そんな人の背中を押す効果はあったに違いない。
上記のように、謎解きの用途は決して限定的ではなく、その特徴を活かせば、いかようにも料理ができそうに思える。そこで、以下では、謎解きをさらに様々な方向でSDGsに生かす可能性はないか模索してみようと思う。
まずは、謎解きの性質について考察しておきたい。私には、謎解きには3つの性質があるように思える。
謎解きの3つの性質
集客力
チーム性
体験学習
集客力
謎解きゲームは、非常に人気で、大きなドームを埋めることもある。
また、特定の謎解きイベントに参加するために、東京・大阪間を移動する人や、海外に行く人すらいる。
謎解きに魅了されるのは、日本人だけではなく、海外でも人気だ。
チーム性
一般的に謎解きイベントでは、チームが組まれ、事前に自分たちの得意不得意を話し合い、役割分担をする。
ビジネスでも重要なホウレンソウを駆使し、比較的高度なチームワークが求められる。
体験学習
何か学習するときは、目で見るより、耳で聞くより、体で感じた方が知識が定着しやすいと言われている。
リアルで行われる謎解きゲームは、そのストーリーや難関なミッションをまさに「体感する」ことになる。
その体感性を生かし、企業の研修で学びを深めるためのワークとして用いられることもある。
謎解きが持つ上記3つの性質を考えると、SDGsへの生かし方も見出せそうだ。
例えば「献血謎」と似たような仕組みで、「謎解きビーチクリーン」のようなことができるかもしれないし、「謎解き植林活動」などができるかもしれない。
また、そもそも「SDGsの認知度を高める謎解きゲーム」みたいなものが作れるかもしれないし、謎解きで教育の質を高めることができるかもしれない。
少し大げさかもしれないが、目標16の「平和と公正をすべての人に」につながるものとして、いろんな人種の人が参加して、お互いの理解を深め合う謎解きゲームが作れる可能性だってある。
「リアル脱出ゲーム」からSDGs推進のヒントを考える
「目の前の謎を解きたい」という欲求が、海や国境を越えて共通するものだとすれば、「謎解きゲーム」が持つ可能性は計り知れないように思える。
SDGsの根本には、「持続可能」というコンセプトがある。そのコンセプトを実現するためには、常にSDGsの行為を行う人が、地球とWIN-WINの関係になる必要があるのではないかと思う。しかし、一方でそのWINを「お金」と限定すると、できることの幅はぐっと狭まってしまう可能性もある。
そこで、「謎を解くワクワク感」などという人間が根本から持ちうる「無償の原動力」に働きかけることができる「謎解きゲーム」は、SDGsをさらに推進するためのヒントになるのかもしれない。